助走の年

2006年が今日で終わります。今年を振り返ってみると、日本にもようやくWeb2.0の大波が押し寄せた年、と言えるのではないでしょうか。(その割には、日本では、まだ何も始まっていないように見えますが・・・・)

年初の梅田望夫氏の「ウェブ進化論」は、やはり決定的に重要な本であったと言わなければなりません。もしも梅田望夫氏という著者を得ていなかったら、日本のWeb2.0は、これまで過去に何回もあった一過性のバズワードで終わっていたのではないでしょうか。おそらくそうなったでしょう。私自身の少ない体験を振り返っても、80年代の「ニューメディア・ブーム」をはじめ、「××革命で日本が変わる」みたいな類の、いろいろな趣向で「バラ色の明日」を語る大言壮語を聞かされてきました。中には、大きな期待を抱かされるようなものもありましたが、ほとんどたいていは、何の成果も生み出さず、忘却のかなたへフェードアウトしていきました。

しかし、世界的に進行する2.0の動向を見ると、日本だけが時代に取り残されていくような、そんな焦りにも似た危機感さえ持たずにはいられません。たしかにバズワードであり、表層的なバブルであるというWeb2.0の側面は否定できません。しかし、たとえ2.0という言葉がそのうちなくなっても、一旦動き出した基本的な太い流れは変わらないような、そんな巨大な歴史的イナーシャ(慣性)を持つものとしてWeb2.0を理解したほうが、どうやら良さそうです。

医療の世界に目を転じてみると、世の中の動きに、より一層大きく遅れをとっていると言わなければなりません。私たちは3年ほど前に、Webベースで医療分野の新しいサービスを開発しようと、ベンチャー企業を作ったのですが、この間、状況はほとんど何も変わっていません。数年前にやはり医療分野でも、当時台頭しつつあったインターネットの勢いに乗じ、「インターネット医療が日本医療を変える」と勇ましくも元気な声が上がりましたが、 その後その成果はどこにも見えません。

しかし、昨年の夏ごろ、米国から聞こえてきた2.0の動向は、日本の医療周辺で暗中模索をしていた私たちに、まるで爽やかな涼風のように吹いてきました。 この風の方向へ向いて進もうと決心して、ようやく新しい医療情報サービスのアイデアに今年たどり着いたわけです。まだまだ、風をつかんだとは言えません。風に向けて、やっと助走を始めた段階でしょうか。でも来年は、風へ向けて羽ばたく時です。

皆さんも、良いお年をお迎えください。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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